法人概要

社会福祉法人身体障害者自立協会の歴史は長く、１９７８年から重度障害者（脳性まひ）への生活と就労をサポートしてきました。当時は障害者が働くことなどイメージできない、ましてや重度障害者（脳性まひ）が外に出ることはまだまだ考えられない時で、創立者である山中一正牧師が「障害者も働かなあかん！」「健常者と一緒に生活せなあかん！」と障害者と健常者の分け隔てをなくそうと活動されました。

いま私が支援している人たちは、身体の重度障害だったり、知的や精神の障害があったりします。世間からみると一般就労が難しい人たちばかりです。
障害者のことを知らない人は、「どうやって働いているの？」と思うでしょう。
それは障害者のことを知っている私ですら、手足が不自由だったり、考える力が限られたり、心と体のバランスが取りにくい人が、働くこと、収入を得るという事について、答えを探したり考えたりすることはとても苦労します。
現代社会において、健常者と肩を並べて世の中にチャレンジするのには無理があります。隅々まできれいに回収されるので聖書に出てくる落穂拾いのようにはいきません。

『あなたがたの地の実のりを刈り入れるときは、畑のすみずみまで刈りつくしてはならない。またあなたの刈入れの落ち穂を拾ってはならない。
あなたのぶどう畑の実を取りつくしてはならない。またあなたのぶどう畑に落ちた実を拾ってはならない。貧しい者と寄留者とのために、これを残しておかなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。』レビ記19：9～10

この考え方にならないのは利益を追求し、効率を求めるからです。効率化はとても大事なことかもしれません。しかし健常者の役割は落穂ひろいのように、貧しいものと寄留者、
つまりこの世の中の弱者といわれる人たちへ仕事を残しておくという「非効率」の考え方が必要なのです。
私たちの仕事はその「非効率」です。紙を細かくするのにシュレッダーでいいところ、みんな手でちぎっています。機械を使えばすぐできることも、技術を使えばたくさんできることも、いちいち分業して、役割を分けて、仕事を増やすようにしています。それでもできなければ、やれることを探してもっと効率を悪くします。効率を考えるのはそのあとです。
みんな自分に与えられた仕事（役割）に真剣に向き合って、自分たちが作ったものを買って下さるお客さんのために、助け合って一生懸命に働いています。
非効率の追求こそ、個性を生かし、その人の役割を見出すのだと思います。

私の施設に通う人の多くは、親と一緒に暮らしている人です。
また、親から離れて一人暮らし、障害者のグループホームで暮らしている方もいます。
ほとんどの人がヘルパーを利用して、家事支援や外出支援を受ながら、生活をしています。障害者が地域で生活するにはとても苦労します。それは皆さんの需要が重なるため、助け手がたりなかったり、時間が合わなかったりします。
特に困ることは障害者が関わると理解されないことです。

日本の社会は超高齢化しています。私たちは健常者であっても障害者であっても歳を取ります。ですから高齢者のことは理解できるので、多くの高齢者施設が次々と建てられています。
しかし、障害者は健常者には理解できないので、障害者の生活を地域に根付かけるのにはとても苦労します。
世の中は合理的配慮が求められていますが、実際に行うに初めから理解されていないので、配慮できないんです。
障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法など法律でいくら頭ごなしにしても、実際に障害者と一緒に暮らしていない健常者にとっては、受け入れがたいのだと思います。

障害者の生活が受け入れられるには、普段から健常者のことを考えるように、障害者のことも考えること、つまり障害者の事を知ることだと思います。
障害とは物理的にできないことや、不自由なことではなく、
「知らないこと」だとおもいます。

社会福祉法人身体障害者自立協会
理事長　西村謙